不埒な男が仕掛ける甘い罠
「…拓真の事責めておきながら、同じ事をしてたら呆れるよね」
「理由は違うだろう⁈俺はお前と向き合わずに他の女に逃げたけど、唯は、前に進みたくて自分の気持ちを確かめる為だった。こうして会いにきたのは答えが出たからなんだよな」
責められても仕方ないのに、拓真の優しさに涙が溢れてきて、震える声を抑えて謝った。
「ごめんなさい」
「謝るなよ。メールが来た時からわかっていた…電話に出なかったのも、最後の悪足掻きだから…ここまで来たんだ、別れてやるよ」
「…今までありがとう」
どんなに考えても拓真の事を嫌いなれなかった。やり直してほしいって言われて、直ぐに嫌だって言えなかったのは、拓真と過ごした時間は私にとって宝物だったから…
拓真のぶっきらぼうな優しさが大好きだった…
「最後にいいか⁈…殴らせろよ。おたくもそのつもりでついて来たんだろう?」
私の体が横にふらついたと同時に拓真は新ちゃんの左頬を殴っていた。
勢いよく後ろに倒れお尻をついた新ちゃんは、拓真を見上げながら満足気に笑い唇を手の甲で拭っていた。
あまりの迫力にただ立ち尽くしている私の肩を押し、玄関から追い出した拓真は悲し気に笑って
「幸せにな…」
ドアを閉め、がちゃんと鍵を閉めた。