不埒な男が仕掛ける甘い罠

いつものアラーム音なのに、イラッとするのは寝不足のせいだろうか?

画面を見ても、拓真からのメールがないのはまだ寝ているからだろう…

彼女が出て行っても気がつかないなんて…

ため息をついても、連絡がくるわけじゃない。

仕方なく着替えを済ませ身支度を整えて下に降りて行った。

「おはよう」

「あら、唯、帰ってたのね」

「うん」

キッチンで朝食の片付けをしていたママは驚きもしないで、忙しく動いている。

「どうせ、彼氏とケンカでもして帰ってきたんだろう」

双子の兄、慧は、朝から思いやりがないらしい。

パパに瞼が腫れていると唇を動かして、教えている。

すると、パパはわざとらしく咳払いをして

「唯、何があったか知らないが、仕事に影響するなら休んだらどうだ?」

いつも、口うるさいパパが気を使うほど私はひどい顔をしているのだろうか?

「あら、娘には甘いのね。私の時にはそのブサイク面はなんだとか、プロ意識がないのかとか怒ったくせに


ママの意地悪な突っ込みにパパはオタオタしだす。

「まったく、ケンカしたぐらいで仕事を休んでたら社会人失格よ。唯、まだ時間があるなら瞼を冷やして化粧で誤魔化しなさい」
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