不埒な男が仕掛ける甘い罠
新ちゃんに興味深々で話かけてくる女性客に、笑顔もなく無愛想に受け答えしていた。
その無愛想さがいいとか、機嫌が悪いせいで眼鏡越しの鋭い目が素敵だとかで、女性客のハートを掴んでしまったのが私としては面白くない。
いくら、お揃いのリングをしていても、女性客にはまったく効果無し。
忙しく仕事をしている新ちゃんに話かける女性客を見ながら内心イライラしているのに、笑顔で接客するのは辛かった。
やっと落ち着いた頃には、新ちゃん以上に私の機嫌は最悪で、新ちゃんは女性客を相手にしていなかったとはいえ、八つ当たりは新ちゃんに向いてしまう。
夕方からは、客層がガラッと変わり1人で来店する男性客が数組と、カップルが数組来店。
昼間の忙しさとは違い、落ち着いた雰囲気で21時にはクローズする事ができた。
時たま、イラッとした瞬間が垣間見えたが新ちゃんだったけど、話かけてくるお客さんは、コーヒーの質問や世間話程度で、きっと、こんな雰囲気を新ちゃんは望んでいるのだろう。
「お疲れ様」
「…お疲れ様です」
テンションの高い美鈴さんとは違い、私の声はトーンダウン。
「週末はもっと忙しくなるわよ。唯ちゃん、明日も頑張りましょうね」