不埒な男が仕掛ける甘い罠
売り上げを確認した美鈴さんは、ニンマリ笑うと手を振りながら、「後はよろしくね」と、元気よく帰って行ってしまった。
片付けが終わり、座ったら動けないのはわかっていても座らずにはいられないほど、残された私達…の疲労は半端なかった。
「もう、無理…歩けないぐらい足がパンパンだよ」
「俺も…こんなの毎日続いたら最悪だ」
ソファに座った私の横にドサっと腰を下ろしながら、経営者らしからぬ発言をする新ちゃんに笑ってしまう。
「うふふ、新ちゃんはくつろげるお店がいいんだもんね」
「まったく、お袋のせいだよ。まぁ、こんなのは、しばらくだけだろうけど…」
「そうかな?新ちゃん目当てに女の人が沢山来そうだけどね」
私の大きな1人事に反応を示す男は、私の頬を軽く抓りながらご機嫌。
「唯にヤキモチ焼いてもらえるなんて思わなかったよ…かわいい奴」
「だって、無愛想なとこがいいとか、眼鏡越しの鋭い目が素敵とか言われてたんだよ」
「そんなかわいいやきもきをやいてもらえるなら、笑顔を振りまくし、眼鏡をかけるのもやめていいけど…どうする?」
意地悪な笑みで問いかけてくる男に、即答する私。
「それもだめ」
満足気に微笑んだ新ちゃんは、私を抱き上げ膝の上に乗せた。