不埒な男が仕掛ける甘い罠

甘い言葉に放心している間に眼鏡を奪った新ちゃんは、シャツのポケットに眼鏡を仕舞い、ぎゅーと抱きついてきた。

「唯…ぎゅーとして慰めてくれる約束忘れた?」

忘れてないけど、どこに抱きしめてあげる状況があったのだろうかと疑問に思いながら、頑張っていた新ちゃんを思い出して

まぁ、いいか…と抱きしめてあげる事にした。

「お疲れ様」

背中を撫で労ってあげていると、不埒な手がシャツの上から背中をなぞり出す。

その手がいやらしく感じるのは、私が新ちゃんの背をなぞる手のひらと違って、指先が背筋にそってゆっくりと降りてくるからだろう…

「…んっ…ちょっと、新ちゃん」

指先から逃げようと背を攀じるが、抱きしめられた膝の上では逃げられるわけもなくて、背をしならせるのが精一杯だった。

「頑張っていたご褒美を唯にもあげないとと思って…同じように撫でてみたんだけど…」

「新ちゃんのは撫でているんじゃなくてなぞってるんでしょう?」

「筋肉をほぐすにはリラックスするのが一番だと思って」

「そんな触り方じゃリラックスなんてできない」

下から見上げる瞳が意地悪く笑っている。

もう、これは完璧に確信犯だ…
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