不埒な男が仕掛ける甘い罠
そんな俺に気がついた慧は、すかさず悪魔の声で囁いた。
「奪っちゃえば…」
なかなか会えないとはいえ、2人は仲の良いカップル。
そんな2人の間に俺が入る隙間なんてあるのだろうか?
小さな頃は好きだと言ってくれた唯だが、今は幼馴染のお兄ちゃんでしかないだろう。
そんな俺が、男として見てもらえるのか?
俺の気持ちをよそに慧は奥のテーブル席を指差し、なぜだか唯と彼氏が仲良く写っている写真をカウンターテーブルの上に出してきた。
なぜ、お前がそんな物を持っているんだ?と思いながら、心がズキッと痛かった。
「右奥の席にいる男、唯の彼氏の拓真に似ているんだよね」
ちらっと横目で見ると、4人で来ているグループの中にスーツを来たチャラそうな若い男2人と、女の武器を前面に出し、体のラインにフィットしたVネックセーターを着ている計算高そうな女、その女の引き立て役だろう…大人しそうな女がいた。
写真をもう一度見直し、見比べて見る。
確かに、似ている。
しばらく様子を見ていたら、計算高そうな女は唯の彼氏に似た男に気があるのが見え見えだった。
男も満更でもない顔つきでボディータッチの多い女と楽しげに会話している。