不埒な男が仕掛ける甘い罠

「好きだからって、彼女がいる限り1番にはなれないんだよ。いつまでも、都合のいい女止まりでいいの?」

「それはいや…」

「なら、協力してよ」

怪訝な表情で俺を見つめる。

「…なんか悪い顔してるよ」

「うん…悪だくみ企んでいるから」

「…遠慮します」

「協力してくれたら、もしかすると彼の心が絵里さんの物になるかもしれよ」

まぁ、絵里さんしだいだろうけど…そこはあえて言わない。

興味がわいた彼女は、身を乗り出してきた。

「どういう事?内容次第で協力できるかも…」

心の中で大きくガッツポーズ。

「うーん、驚かないで聞いてほしい。…絵里さんの好きな男は、俺の幼馴染の彼氏なんだ」

「うそ‼︎」

「こんなことで嘘は言わないよ。知ったのは最近なんだけど」

真実の中に嘘も混ぜれば、話を聞いた本人は勝手に信じてくれる。

「でも、どうしてわかったの?」

「接客業だから、1度来店した客はだいたい覚えてしまう。絵里さんの話から検討はついていたんだ。それで、幼馴染の彼氏の写真を偶然見る機会があって、まさかと思ったよ」

「そんな偶然って?」

「あるんだね…俺も驚いた。だから、確かめたくて写真をもらったんだ。…見てよ。例の男に間違いないかな?」
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