不埒な男が仕掛ける甘い罠
「それなら、無理だよ」
「うーん、だけど、浮気現場を目撃したら、唯の性格からだと一気に冷めるはずなんだよね」
「あっ、また悪い顔」
「だから、絵里さんの協力が必要なんだ」
「…偶然を装って、私と拓真君が一緒にいるところを目撃させればいいってことよね」
「頭の回転が速くていいね…でも、その前に布石が必要だと思わない?」
「私に何をさせる気なの?」
俺の悪だくみに絵里さんは恐怖感を感じて真っ青になってしまった。
「話を聞いた以上は協力してもらうよ。今さら逃げようと思わない方が、絵里さんの為だからね」
後悔した表情から諦めに変わり、決意したように大きく頷く絵里さん。
「何をしたらいいの?」
唯と奴が別れれば、彼女のポジションには自分がという打算が働いたようだ。
俺の計画通り、そう仕向ける事に成功する。
「それはね…これから考えるからしばらく待ってて」
「もう…」
客が引き早めにclauseの看板を出し、俺は一応オーナーだから2人に閉店後の後片付けを頼む。
絵里さんと俺はさっきの会話の続き…
「絵里さんは、彼の部屋によくいくの?」
「ほとんどね…外で会う事は滅多にないわ。それが余計ムカつくのよね」