不埒な男が仕掛ける甘い罠
隣に温もりがない事に気づき、キッチンから香るいい匂いに目覚めていく。
匂いにつられて寝室から出ると、ダイニングテーブルの上には朝食が並んでいた。
「おはよう」
「…おはよう。朝食、ありがとう。私がしないといけないのにごめんなさい」
起きれなかった事に落ち込む私の前まで来た新ちゃんが、そっと私を抱きしめてきた。
「俺が作りたいから作ったんだ。結婚してもその時にできる人がすればいいと思ってる」
だからね…気にしないでと言われるが苦笑い。
そして、唇に軽く触れる新ちゃんに甘やかされしまう。
後片付けは、どうしても譲れなくて…今日の仕込みを理由に新ちゃんをお店に向かわせた。
スペアキーをもらいウキウキとして、仕事に行く準備に取り掛かる。
実は昨日、少しだけ私の荷物も引越してきていたのだ。
同棲してるみたい…
と浮かれているとスマホが音をたてる。
画面を見るとパパからだった。
びくびくしながら、耳にあてる。
「おはよう、パパ」
「唯、今日の夜、新と一緒に家に帰ってきなさい」
パパの低い声に泊まった事を怒られるんだと思い、必死に謝る私。
「連絡しなくてごめんなさい。気がついたら新ちゃんが連絡した後だったから…」