不埒な男が仕掛ける甘い罠
ニカッと笑って私の反応を楽しんでいる。
「久しぶりの幼馴染に失礼じゃない?」
「俺が誰かわからなかったくせに、何が幼馴染だよ」
おでこを人差し指で小突いていく。
私の記憶にある最後に見た新ちゃんは、金髪に近い髪をショートミディアムぐらいの髪にウェーブをかけて目元が見えるか見えないぐらいの前髪の長さに表情がわからなかった。
いつも、気だるいそうに前髪をかきあげていたが、その仕草に見惚れて顔までじっくり見た記憶がない。
だから、わからなくても仕方ないじゃないと唇を尖らせていた。
「だって…あの頃と違って大人っぽいから…」
わからなかったよ…
そう言おうとした私の頬を彼の手のひらが撫でた。
「変わらないって言うのはウソ。唯が大人っぽくて驚いた」
声のトーンが甘く聞こえるのは気のせいだろうか?
頬を撫でた手のひらが顎にかかる時…
「新…何してるの?」
痺れを切らした美鈴さんが、新ちゃんの肩を掴んだ。
新ちゃんに隠れていた私に気がついた美鈴さん。
「あら、唯ちゃんおはよう。驚かそうと思っていたのに会っちゃたわね」
いたずらが失敗した子供のように残念な表情をしていた。