不埒な男が仕掛ける甘い罠
「何、企んでたんだよ」
新ちゃんの冷ややかな声にも、美鈴さんは平気な顔で企みを暴露しだす。
「新と唯ちゃんの再開の瞬間をお膳立てしてあげようと思ってたのよね」
「なんだ、それ?」
呆れた表情をする新ちゃんに美鈴さんは、膨らませていた想像を説明する。
「…お店を定休日の日にリニューアルすることにしてたの」
私を見る美鈴さんに、そうなんですか⁈と頷く。
「朝、出勤して来たら、あっちの壁がなくなって隣と繋がってたら驚くでしょう?」
「はい」
「隣がカフェになってて、バリスタ姿の新がいたらどう?」
「…多分、すごく驚くかな?」
「そうよね…それなのに新たらどうして唯ちゃんに会っちゃうのよ」
「俺が悪いのか?」
納得いかない顔をして、私に助けを求めてくるから
「そうみたいだね」
美鈴さんの計画では、新ちゃんは私とまだ会っちゃいけなかったらしい。
味方がいないと思った新ちゃんは、降参のポーズをし、なぜか苦笑いして私の頭を撫でると
「またな」
と言って出て行った。
「唯ちゃん、悪いけどもう少し向こうで話してくるからお店お願いしていいかしら?」
「はい、大丈夫ですよ」