不埒な男が仕掛ける甘い罠
1人になった店内
私は、開店前までの準備をしながら、頬を緩ませていた。
新ちゃん…
昔からかっこよかったけど、しばらく会えなかった間に大人ぽくなって素敵になってたなぁ。
感触が残る肌を辿り頬から顎に指が触れると、じわじわと甘く痺れを感じて新ちゃんの指先の動きが鮮明に蘇ってくる。
なんなの?
胸がザワザワとする。
こんなこと初めて…
幼馴染なのに、1人の大人の男として意識している自分がそこにいて…
無意識に首を左右に振り、
違う…私には、拓真がいる。
新ちゃんは幼馴染のお兄ちゃんだよと自分の心に言い聞かせた。
そして、開店準備をする為にいつものように床をはいてショーケースのガラスを拭いた後、窓ガラスを拭いていた。
すると、新ちゃんのお店になる隣の店舗から、新ちゃんと大工さんらしき人が出てきて外観を見ながら真剣な表情で話し込んでいた。
つい、手を止め魅入ってしまう。
すると、私に気がついた新ちゃんはクスッと笑い、口先を動かした。
『ボサッとしてないで、仕事しろよ』
気がつかれた事に気まずくてベーと舌先を出すと、私を見ていた新ちゃんの目が見開き、口元に笑みを浮かべた。