不埒な男が仕掛ける甘い罠
裏口を出ると隣の空き店舗の裏口のドアが開いていて、中では、つなぎを着た大工さんらしき人達が数人、一生懸命に作業を進めていた。
なんのお店かなぁ?
明日にでも、美鈴さんに聞いてみよ…
そう思うだけで彼が待つ車まで駆け足で通り過ぎた。
見覚えのある黒い車の助手席のドアをガチャと開けて、シートに滑り込んだ。
「お待たせ…」
座ったと同時に、何かが壊れる鈍い音がした。
慌てて、お尻の下敷きになっていた物を確認するとサングラスだった。
ウワッ、これブランド物だ。
恐る恐るサングラスを彼の前に出して謝る。
「…ごめんね」
「……それ…何やってるんだよ。壊すなんて最悪…どうするんだよ」
恐ろしい形相で、怒鳴りだす拓真に半泣きになってしまう。
「ごめんって謝ってるのに、わざとじゃないし、こんなところに置いておく拓真も悪いよ。だから、そんな顔して怒らないでよ」
「俺が悪いっていうのか?わざとじゃなくても、お前の不注意だろ⁈……アーァ、どうするかな?」
私から、サングラスを奪い壊れた箇所を眺めて独り言を言う拓真。
「同じ物を買うから許してよ」
「同じ?限定品だからある訳ないだろ…」