不埒な男が仕掛ける甘い罠
微妙に触れた指先の感触にドキドキする暇もなく、私が口を開けてアッと出ない声を出すと
んっ?
と不思議な表情をする新ちゃん。
「生クリームがついているって教えてくれたら、自分でとったのに…」
「あぁ…そういうこと。味見したかっただけだから気にするな」
「あ、味見って…言ってくれればケーキ半分あげたよ」
「俺、ケーキ嫌いだから」
美鈴さんのケーキ大好きだったくせに…
うそつきと唇を尖らせた。
「子供の頃は好きだったけどね‥食べ過ぎて嫌いになったんだ」
「美鈴さんはそのこと知ってるの?」
「あぁ…」
「それなら、味見したのはどうして?」
「美味しそうだったから…かな?」
新ちゃんの言ってる意味が全くわからない。
「美鈴さんのケーキどうだった?」
「甘くて無理」
顔をしかめて私が飲んでいたコーヒーを奪った新ちゃんは、そのまま、私が口をつけていたカップ口に唇をつけて飲んでいた。
ア然としてみているだけの私。
間接キスだよね…
「どうかしたか?」
新ちゃんは意地の悪い表情をするから‥何も言いかえせない私はなんでもないと首を左右に振るしかなかった。
鼓動がいつもより少しだけ速く感じる。