不埒な男が仕掛ける甘い罠
熱く語る男。
「イメージ通りだね」
店内をまた見渡しながら答えた。
「だろ⁈でも、それじゃダメなんだ。ケーキを買いに来た人が焙煎した匂いにつられてコーヒーを飲んでいく。その逆で、コーヒーを飲みに来た人がケーキの焼ける甘い匂いにつられてケーキを食べてってくれないと隣にカフェを作った意味がないんだ。だから、お袋と俺のもくろみが一致して、そこの壁を突き破る事で匂いも人も移動するだろうって魂胆」
「そうなんだ…」
「金儲けをしたいわけじゃないけど、お店を持つならそこそこの売り上げはほしい。じゃないと唯の給料もアップして上げれないからな」
「…んっ?私の雇い主は美鈴さんだよね?」
「俺もだけど…共同経営者って奴」
えっえー…
初めて知る事実に声も出なかった。
そっか…親子だし不思議じゃないよね。
「唯には、こっちの店にも出てもらうつもりだからよろしく」
体をこちらに向け、微笑んみながら私の頭を撫でていた。
「さて、飯でも食べてこうぜ」
「私、ケーキ食べたばかりだけど…」
「わかってるよ。これから一緒に働くんだから親睦も兼ねて飲みに行こうって誘ってるんだよ。わかれよ」
「そういうことならつきあう」
お酒を飲んで憂さを晴らしたいと思っていたから、頷いていた。