不埒な男が仕掛ける甘い罠
ずっと側にいると言い張り、お嫁さんになると言い出した。
宥める為にゆびきりげんまんをして約束した小さな小指が愛しくて、潤んだ瞳で信じて疑わない笑顔に俺の心は捕まえられてしまったらしい。
その時から、彼女は俺の大事な女になった。
もちろん、そんな小さな時の記憶は唯にはなく、彼女にとって俺は幼馴染の優しいお兄ちゃん。
だが、成長して大人びていく唯を見るたび、優しいお兄ちゃんではいられなくなる。
高校生になった頃から俺の頭の中は邪な妄想を繰り広げ、中学生の彼女に手を出せるわけがなく、うっぷんを晴らすように彼女の代わりに他の女を抱いて欲求を満たしていた。
大学に入ってもふらふらと遊んでいる俺に、親父は努力もしない奴に跡を継がせられないと憤慨し、家を追い出された。
もちろんコンフォルトでのバイトも禁止され、行くあてもなくふらついていた。
そんな時、偶然入った古びた喫茶店。
白髪の男性が入れてくれたコーヒーの味に惚れ、大学も辞め頼みこんでそこで働くことになった。
店のオーナーだった男性を満足させられるコーヒーを入れられるようになるまでそこで働いた。
その後、カフェなどを転々としてやっと自分の店を持つ決心がついた。