不埒な男が仕掛ける甘い罠

唯のことは忘れたことなんてない。

必死に親父に認めてもらえるように頑張って来た。

その間に、唯に彼氏ができるなんて思いもしないで…

彼氏ができて当たり前の歳になっているのに、いつまでも俺の中では唯はあの時のまま成長していなかったらしい。

Aliceに入った唯を追いかけ、俺もAliceに向かった。

カーテンレールの向こうで着替えている唯に、なんて声をかけようか悩んでいたら開いたカーテン。

化粧で誤魔化しているが、瞼が重そうに腫れている。

目も僅かだが充血し、泣いたのだろうとすぐにわかった。

そこへ、外からお袋の俺を呼ぶ声にやっと俺が新だと気がついた唯にショックを隠しながら、からかう。

相変わらず、唇を尖らせる癖は治らないようで拗ねた仕草に可愛らしくて無意識に伸びた俺の手。その唇に触れる衝動を抑え頬を撫でると唯の黒目が落ち着きなく左右に動く。

『変わらないって言うのはウソ。唯が大人っぽくて驚いた』

大人の男らしく、甘く囁き俺を意識させようとしていたらお袋が邪魔をする。

唯に再会するタイミングじゃなかったと怒るお袋。

まぁ、昔から俺の嫁さんは唯がいいと猫可愛がりしていたお袋だから何か企みがあったのだろう。

俺のやり方で攻めさせてもらおう。
< 28 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop