不埒な男が仕掛ける甘い罠
冷たい視線を私に向けた後、サングラスを眺めている。
今までの拓真なら、気にするなって優しく言ってくれたのに、と口を尖らせてサングラスを私も眺めていた。
よくよく見ると、男物にしたら違和感を感じた。
首を傾げ
「そのサングラス、拓真のだよね?」
「……あぁ…そうだよ」
目も合わさずにおどおどして答える拓真。
変なの…
「壊れた物は仕方ないよな…まぁ、なんとかなるか⁈」
「そうなの?」
「……もう、この話はおしまい。唯と久しぶりのデートだもんな。怒って悪かったよ」
いつもの拓真に戻って、優しい笑みを浮かべ頭を撫でてくれた。
「本当にごめんね。拓真に早く会いたくて…」
シュンとしながら、拓真を見つめた。
「…俺も、唯に会いたかった。ずっと、電話ばかりだったもんな」
「そうだね」
拓真と私は、高校の同級生だった。
大学の卒業を前にして、同窓会があり四年ぶりの再会で、実はお互い片思い相手だったとお酒の勢いで暴露して、お互いフリーということで付き合うようになった。
接客業の私と会社員の拓真とのすれ違いは、初めからわかっていた。
それでも、お互い無理をして時間を見つけては会っていたのに、ここ最近、会える日は月に数えるほどで、今日も二週間ぶりぐらいだった。