不埒な男が仕掛ける甘い罠
「チッ、お袋だな…余計な事言って。…戻って来たのは別の理由」
薄暗い車中、視線が重なり合う。
艶めいて色っぽく見える瞳に、ゴクッと喉を動かしていた。
「まぁ、あの店はいずれもらうつもりでいるけど、それより先にほしいものがあるって思い出したんだ」
「それって‥なんなの?」
「‥そのうち唯にもわかるよ」
重なっていた視線が外れるとタクシーを止めた新ちゃん。
スタイリッシュな駅前と違うネオン街に着いていた。
タクシーを降りて初めてのネオン街の煌びやかさに圧倒され、スナックやバー、風俗店などのネオンに目がチカチカして佇んでいた。
「…唯、こっち」
新ちゃんに腕を掴まれ歩き出した。
「酔っ払いや客引きがいるから離れないで」
そういう理由かと掴まれた腕を見つめたまま歩いて行く。
少し歩いて行くときらびやかなネオン街からモダンなスナックやバーが立ち並んだ道に入った。
そのうちの一軒のバー【S】の扉を開いた。
「いらっしゃ…新さん、お疲れ様です」
新ちゃんを見て笑顔から顔が強張ったチャラい感じの男性は、礼儀正しくお辞儀をする。
そして、カウンター内にいる男性が眉をしかめた。