不埒な男が仕掛ける甘い罠
「カウンターでいいか?」
「…うん」
2人の男性の態度の違いに戸惑う私と違って、新ちゃんは気にならないみたいで椅子に座った。
脚の長い椅子は座面が高く私の身長でも貫に足をかけ
ないと座れない。
四苦八苦していたら、横から新ちゃんの手が椅子の背を押さえ、もう片方の手で私の手を引っ張ってくれてなんとか座る事ができた。
「…ありがとう」
「礼はいらないよ。唯のおかげで問題点が見つかったし、サンキューな」
私の頭を撫で微笑んだ新ちゃんは、カウンターにいる男性に声をかける。
「この椅子、女性が座りやすいように改善するべきじゃないかな」
ニコニコ顔で、店員さんに物怖じもしないで言ってしまい、ちょっと…新ちゃんと彼の服の裾を引っ張っても遅かった。
「そんなことないですよ。鈍臭い私が悪いので…」
申し訳なくて、フォローをしても新ちゃんの口は止まらない。
「椅子を全部変えたら⁈」
もう、新ちゃんたら…
お店の人に失礼だよ。
「そうだな…新の言う通りもっと座りやすい椅子を探してみるよ。で、今日は客で来たんだろう?何飲む?」
カウンターの男性が怒るわけでもなく、椅子を探してみるって…