不埒な男が仕掛ける甘い罠
だから、わざと怒ったふりをして頭の上にある手首を引き剥がして振り払った。
すると一瞬、驚いた表情を浮かべた新ちゃんの表情が妖しい笑みに変わった。
肩肘をカウンターについて顔をこちらを向くと、振り払った手が私の髪を一房掴み、毛先を弄ぶように人差し指に絡めながら艶かしく微笑んでいた。
「…怒るなよ。なぁ…どうやったら機嫌が治る?」
困ったような口ぶりをしているのに、表情は困っていない。
私の反応を楽しんでいるとしか思えない。
絡めていた髪から指を解いた人差し指の背で、頬をゆっくりと撫で下唇を指先で弄んでいる。
別の生き物のように唇がドキドキと脈打ち、頬が熱く火照りだす。
お酒のせいじゃない…
急に見せる男の色気に逆上せているのだ。
こんなこと彼氏の拓真にもされたことないのに…
「…ふざけないで」
からからに口の中が渇いていて迫力のない声がでた。
「ふざけてないけど…子供扱いされたくないんだろう?」
「そうだけど…だからって唇を触る?」
髪を指に絡めたり、頬を撫でたりしたことも突っ込みたいとこだけど、とりあえず、今はまだ唇を弄ぶ新ちゃんの指をなんとかしたい。