不埒な男が仕掛ける甘い罠

「なんてな…ドキドキしたか?」

私が考えていたことと同じ内容を口にされ深く傷ついたのに、一瞬でもときめいたことは言えない。

「…もう、人が真剣に悩んでいるのにからかわないで」

ドキドキしたことを隠して怒った。

「一瞬でも彼氏のことを忘れてたくせに」

見透かされている。

「そんなことないもん」

「ヘェ〜、別にいいけど…まぁ、彼氏が言うように、もう2度としないって言葉を信じてやれば…」

投げやりな態度と言葉に、見放されたようで切なくなるのはなぜだろう?

「同僚として部屋にあげてるだけかもしれし、体の関係があるって証拠がないなら騒ぎたてない方がいい」

新ちゃんには言えないけど、拓真の背には真新しい爪痕が残っていたの…

「もし、証拠を見つけたら…」

「唯を悲しませる奴は俺が懲らしめてやる」

お手拭きを捻り、そう言ってくれたことに笑っていた。

「そうやって笑っていろ」

新ちゃんの手のひらが、私の頬を優しくポンポンとうった。

新ちゃんの言うようにこのまま騒ぎたてない方いいのかもしれい。

背中の爪痕は、拓真自身が背中をかいた痕かもしれない。

そもそも、背中に爪を立てられ気づかないなんておかしい。
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