不埒な男が仕掛ける甘い罠
だから、喧嘩なんてしたくない。
「どこに行く?土曜の夜だから映画はいっぱいかなぁ?」
「…うん、そうだよな‥俺ん家にする?」
えっ…久しぶりに会うのに部屋デートなの?
そう思うのは私だけ?
曇る私の表情に気がついた拓真が、私の大好きな照れた表情で呟く。
「誰にも邪魔されずに2人きりでいたいんだけど…ダメか?」
拓真が言おうとしていることがわかって、頬が染まる。
「ううん…」
そう言うのが精一杯の私。
だって、拓真は私の初めての人。
だから、こういう時は本当になんて答えていいのかわからない。
「今日、泊まって行くよな」
そんなつもりはなかったから、準備をして来なかったけど…久々に会えたんだもの。
一緒にいたいって思ってくれる拓真の気持ちが嬉しくてうんと頷いた。
拓真が運転する車の中で、ママにメールする。
『今日は、拓真ん家に泊まってくるね』
まだ、この時間帯は忙しくて見てる暇もないだろうとわかっていてのメールだ。
ママが見る頃には、パパが帰りが遅いとうるさく言うだろうけど…ママならパパをなだめてくれるはず。
だって、パパはママが大好きだからママが言うことは渋々オッケーする。