不埒な男が仕掛ける甘い罠
疑いを拭い去ろうとした。
「ありがとう…新ちゃんに相談してよかった。私、拓真を信じるよ」
「……」
新ちゃんは、ただ笑みを浮かべているだけ…
「さて、そろそろ帰るか?送っていく」
「いいよ。タクシーで帰るし大丈夫だよ」
そんなやりとりをし、レジ横にある時計は10時半を過ぎていた。
結局、支払いは新ちゃんがしてくれて
「…ありがとう」
「気にするな」
お店を出ると、腕を組んだカップルとすれ違う。
えっ…
お互いに振り返ると、やはり拓真で…その腕に絡みつく女は誰?
「唯…どうして…」
それはこっちのセリフだ。
「ゆい?」
表情が強張る私に気がついた新ちゃんが、心配して名前を呼んでいるのに返事もできない。
「彼氏なのか?」
コクンと頷く私を優しく包み込むように腕の中に閉じ込めた新ちゃんから、今まで聞いたことのない冷たい声がして、自分のことのように怒ってくれているのがわかる。
「……こいつがいるのに、別の女とデートとはどういうつもりだ?」
「関係のない奴に言われる筋合いはない」
「関係なくないんだけど…唯を泣かせる奴は懲らしめるって約束したばかりなんだよね」