不埒な男が仕掛ける甘い罠
新ちゃんの優しさにポロリと涙が流れた。
すると、拓真の腕に腕を絡めていた女性が笑みを浮かべる。
「こんばんは…拓真くんの彼女の唯さんよね。私、松下 絵里です。彼、私が忘れたピアスをわざわざ届けにきてくれたのよ。明日、会社で会えるのに拓真くんって優しいわよね…」
彼女は、何を言いたいんだろう?
これは、宣戦布告なのだろうか?
「絵里さん、帰ってくれる?」
拓真が冷ややかな声で絵里さんの名を呼びながら、彼女を腕から引き離した。
一瞬、表情が険しくなった彼女だが、拓真に笑顔をむけてから帰って行ってしまった。
「…今日は帰えるわ。また、明日…」
残された私達3人…
新ちゃんの服をぎゅっと握ると、私の頬を撫でながら微笑む。
「なんて顔してんだ…ちゃんと話合うチャンスだぞ。2人で話して来い…俺は、もう少しそこで飲んでるから話が済んだら連絡しろ。送ってく」
名刺入れからスッと一枚抜き、俯く私の手に握らせると頭をポンポンを叩き拓真に体を向けた後、お店の中に入って行った。
拓真にどこかお店に入って話そうと言われたけど、私は首を振る。
「あっちに公園があったから行こう」
当たり前のように手を繋ごうと手を差し出す拓真。