不埒な男が仕掛ける甘い罠

「……大事なら浮気なんてしない」

「浮気じゃないって言ってるだろう…お前こそどうなんだよ。あのイケメンは誰だよ。抱きしめられてたじゃないか⁈」

今、思い出したように捲したてる。

「彼は、私の幼馴染なの。拓真と違ってやましいことなんて私にはないんだから」

「幼馴染⁈お前がそう思っていてもあいつはそう思ってないぞ」

「なによ、それ?」

「俺を敵のような目で睨んできた」

それは、拓真の事を相談していた矢先の出来事に、幼馴染として怒ってくれただけなんだろう。

今の拓真に何を言っても無理だと思って口を閉ざした。

「……唯、唯が嫌ならもう絵里さんとは2人で会わない。だから別れるって言わないよな⁈」

すがるような潤んだ瞳に、胸が苦しくなる。

本人の口から本当の事を聞かされて、裏切られてショックを受けているのに、拓真と別れるという選択ができないのはどうしてだろう?

「今は何も考えられない」

「ごめんな…でも俺、唯と別れるなんて嫌だから、元の俺たちに戻ろう」

ぎゅっと抱きしめられながら私は思う。

嫌なら浮気なんてしなければいいのに…

真実を知って元に戻れると本当に思っているのだろうか?と…
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