不埒な男が仕掛ける甘い罠
拓真のマンションの部屋に入るのも1ヶ月ぶりぐらい。
前回のデートは、ラブホで2時間ぐらいしか一緒にいられなかったから、今日のお泊りは久しぶり。
整理整頓が苦手な拓真のことだから、リビングや流し台の中は散らかっているんだろうな…
どこから片付けようかな?なんて考えながらリビングに行くと、散らかっているはずのリビングは整理整頓されている。
チラッと見たキッチン付近も綺麗になっていた。
「…部屋の中、綺麗だね」
「…あっ、そうだろう。…昨日、会社の同僚達が遊びにきてさ…先輩の絵里さんが見兼ねて片づけてくれたんだよ」
「ふーん…そうなんだ」
言い訳がましい言い方に、なんとなく棒読みに返事をして、来る途中に買い物してきた食材を持って冷蔵庫を開けると、普段ビールの缶しかない冷蔵庫に野菜やお肉が入っている。
開けたまま動かない私に、拓真が声をかけきた。
「…どうした?」
背後から覗き込む拓真が、小さく舌打ちする。
「…ほら、昨日…うちで鍋した残りを絵里さんが冷蔵庫に入れていったんだよ」
そう?
その割には、真新しいままの物がたくさんあるけど…
私の手からビニール袋を取り、そのまま冷蔵庫の中に袋ごと突っ込んだ拓真。