不埒な男が仕掛ける甘い罠
「いいよ、気にするな」
「そんなわけにいかないよ…クリーニン…グ……」
新ちゃんの服を汚してしまった申し訳なさに必死になっていて気がつかなかった距離に、顔を上げたことで突然気がついてしまった。
鼻先が触れる距離
ちょっと角度を変えて、お互い距離を詰めれば触れてしまう唇に…
見つめる瞳に…
ドキっとして目をそらし、少しだけ顔を横に向けた。
それがいけなかったのか、顎をつかまれグイッと互いに向き合うように顔が正面を向く。
なぜだか、新ちゃんの表情は苦しそうに顔を歪めていてジッと私を見つめてくるから、また、視線をそらしてしまった。
「…唯…視線をそらさないで、俺を見て」
今まで聞いたことのない艶めく声に、ドギマギして目が泳ぐ。
平静ではいられない。
「……ゆい」
艶めく声に、甘さを含んで名前を呼ばれる。
それは、まるで恋人に甘く囁くように名前を呼んでいるようで、腰あたりの奥底に感じたことのない疼きがおこり足元がふらつく。
ぎゅっと目の前のコートを握りしめ、それに耐えた私の腰を支える手の主が妖艶に微笑んだ。
「腰にきたみたいだね」
そして、唇との距離が更に縮まっていた。