不埒な男が仕掛ける甘い罠
吹きかかる息は暖かく、甘い香りが鼻腔を通り過ぎていく。
香水とは違う別の香り…
この匂いに脳が侵食され、思考を奪っていく。
ボーとする頭…の中で警報機がなっているはずなのにそれさえも聞こえない。
チュッと唇が音をたてた。
冷たい唇に残る温もりに、現状を受け入れられないと
瞼が何度も瞬きしている。
そんな私を見て微笑む男が唇の上で話し出す。
「浮気された事なんて忘れさせてやるよ」
それはどう言う意味だと考える暇を与えてくれない男は、そのまま唇に触れ何度も角度を変え唇を食んでは下唇を甘噛みし、弾いてはまた、その唇目指して艶かしくくちづける。
その間、顎を掴んでいた指が、頬をかかる髪を耳にかけ、そのまま耳の輪郭を確かめるように撫で回す。
ジンジンと熱くなる耳は私の意思を無視して愛撫に夢中になっている。
耳だけじゃない…
唇だって、与えられる唇の愛撫に吐息を漏らし応えているのだ。
おかしいと思っているのに拒むことができない。
拓真がいるのに…
新ちゃんは幼馴染のお兄ちゃんなのに…
心はブレーキをかけようとするのに、ボーとする頭の中は次第にフワフワと気持ちよくなり何も考えられなくなっていた。