不埒な男が仕掛ける甘い罠
「今すぐ唯がほしいんだけど…」
ぎゅっと抱きしめてきて、何かをごまかすように唇へのキスもないまま私の耳朶を喰み彼の手が早急にセーターの中に…
ベッドから重い体を起こし、ベッドサイドのライトをつけて隣でうつ伏せになって寝息を立てている拓真を見つめる。
今日の拓真は、やはりなんだか変…
何がって?
…いつも私を抱く時の優しい拓真なんだけど、私の知っている抱き方じゃなかった。
まるでスポーツをしているみたいに楽しんでいた。
だからなのか、めずらしく彼は眠りについている。
その彼の背中の肩甲骨あたりにある爪痕
真新しいけど…私じゃない。
短く切った私の爪を見つめ、爪を立てるほど拓真とのSEXで乱れた事がないなぁと、他人事のように感じてしまうのは、どうしてだろう?
拓真のことは好きだしSEXだって嫌いってわけじゃないのに…一心不乱に乱れた事がなく、いつも意識は別の事を考えている自分がいて、いつも行為の後は割と冷めている。
だから、彼の背中の爪痕に気がついてしまった。
見ては行けない物を見た気がして冷蔵庫に水を取りに行くと、やはり、冷蔵庫の中身に違和感しか感じない。
冷たい水を飲んでもスッキリせず、シャワーを浴びに浴室へ向かった。