不埒な男が仕掛ける甘い罠
私の気持ちはどこにある?
外からの日差しに目覚めた私は、頭の上まで手を伸ばして体を起こした。
あのまま寝てしまったようで、しわくちゃの服は昨日のままだった。
あー、やっちゃった…
化粧も落とさないで寝てしまった事を後悔して鏡を見てみる。
でも、鏡の中の私は瞼が少し腫れぼったいぐらいで、化粧気がないけど…スッキリした表情をしている。
そっか…
昨日、新ちゃんの胸を借りて大泣きしたんだったと思い出した途端、新ちゃんとキスした唇に触れていた。
今更、恥ずかしさに頬を染め恥じらう鏡の中の私に毒突く。
ファーストキスじゃあるまいし、なんて顔してるのよ…
新ちゃんだよ…
幼馴染のお兄ちゃんだったのに、突然、男と意識しろなんて…
好きだと言った新ちゃんの艶ぽい声を思い出し、体の芯から甘い疼きを起こり、ブルっと体が震えボーッと脳内がふわふわしていた。
キスの余韻に浸り目がトロンとした自分を鏡の中で見つけ、諫めてみるが頬の熱さはとれなかった。
「あー、もう…しっかりしろ」
両頬を手のひらでパチンと叩き、服を着替えた。
下に降りていくと、キッチンにはママが朝食の後片付けをしていて、リビングにはパパと慧、そして、新ちゃんがいた。