不埒な男が仕掛ける甘い罠
「おはよう」
私に気がついたママの声に、新聞を読んでいたパパが顔を上げる。
慧はなぜだかニヤニヤし、新ちゃんは手に持っていたカップをソーサーに置いて微笑んでいる。
「お、おはよう…」
「おはよう、休みだからって寝坊はどうかな?」
ちょっと不機嫌なパパの声に、壁に掛けてある時計を見ると10時になろうとしていた。
あちゃーと思っていたら
「昨日遅くまで俺に付き合わせて飲んでいたからなんで、唯が寝坊したのは俺のせいでもあるんで…」
庇おうとしてくれる新ちゃんが、パパに申し訳なさそうに謝ろうとしていて
「ごめんなさい。目覚ましかけるの忘れて寝てしまったから、新ちゃんは悪くないよ」
私は、あわててパパに事情を説明した。
「まぁ、それなら仕方ないが休みだからとダラダラした生活はダメだぞ」
「はい…」
パパの機嫌も戻って、私はダイニングテーブルの朝食を食べ始めていると
「仁さん、俺の店の最終工事が今日あるんですけど、唯に手伝ってもらってもいいですか?」
えっ…
「例の店の事か…美鈴さんがいるだろう?」
「えぇ、いますが、母は作るの専門なのでお客目線で意見がほしいんです」