不埒な男が仕掛ける甘い罠
「休日出勤扱いになるんだろうな」
「もちろんです」
「それなら、仕方ない。唯、手伝ってあげなさい」
「ちょっと…私を無視して勝手に決めないでよ。私にも都合があるんですけど…」
箸を持ったまま立ち上がり抗議する。
「自分が働くお店の事なのに、それより優先する大事な事でもあるのか?」
うっ…
予定なんてないけど、昨日の今日で気まずい。
どうしてそんな平気な顔で私の家のリビングでくつろいでいるのよ。
拓真との事や、新ちゃんの事を1人で考えたかったのに…
「…ないです」
「だよね。じゃあ、朝食を食べ終わって準備ができたらお店に行くから、早く食べて…」
私を好きだと言った唇が、意地悪く笑った。
もう…もう、と訳のわからないまま急いで準備を終えリビングに行くと、慧しかいない。
「新ちゃんは?」
「車取りに帰ったよ」
「ふーん」
それなら、お店で待ち合わせで良かったんじゃないのと唇を尖らせてソファにドスンと座った。
「パパとママは?」
「買い物デート」
相変わらず仲のよろしいことで…
「ふーん」
「で、いないから聞くけど、昨日、新と何かあった?」
「…な、何もないよ」