不埒な男が仕掛ける甘い罠
どもる私を見て、楽しげに笑う慧。
「突然、新が夜中に来てさ…泊まらせろっていうんだぜ。珍しいから理由を聞いても何も言わないくせに、お前と彼氏の事ばかり聞いてきてさ…お前の寝坊の原因と関係あるんだろう?」
「…」
「キスしておいて、何もなかったとは言わせないぞ」
「見てたの?」
「偶然だけどな…見られたくないなら家の前であんな事するなよな」
「あれは、新ちゃんから…」
「だろうな…お前の性格からして、彼氏がいるのに浮気なんてしないよな」
拓真は、私がいるのに浮気したんだよね…
ズキンと胸の奥が痛かったが、結構、冷めてる自分がそこにいて驚いている。
まるで、他人事のような感情
ズキンと痛かったのは、裏切られていたのに気がつかなかった愚かな自分を思い出したからで…
「まぁ、そろそろ向こうも重い腰を上げて本気で動くようだし、お前も恋に恋してる自分から卒業したらどうだ?」
同じ歳のくせに、先輩面してお説教する慧に腹がたった。
「恋に恋してるって何?私は、拓真が好きなの」
「その拓真君を好きな自分が好きなんじゃないのかって言ってるんだよ」
「余計なお世話よ。慧にそんなふうに言われたくない」