不埒な男が仕掛ける甘い罠
そう言葉にしながらも、慧の言葉を否定できない自分がそこにいた。
「そんな意固地になるな…かわいくないぞ」
「意固地になんてなってないから…」
フッと目を細め見透かした目をした慧は、口を引き結ぶと両の手のひらを胸の高さで広げ首を少し傾げ、私の肩をポンと叩くとリビングを出て行ってしまった。
意固地になんて…なってない。
自分自身に言い聞かせるように、心の中で呟いた。
そうでもしないと、モヤモヤする感情を鎮めれない気がして…
だけど、余計にモヤモヤしてくる。
もう、なんなの…
私の心を乱さないでほしい。
恋に恋してるってなに?
拓真が好きな自分が好きってどう言う意味?
あいつも動きだすって誰のことよ?
全然、わかんない…
それなのに、慧のあの瞳は全てわかっているような眼差しだった。
ムカつく…
これから拓真とどう付き合って行こうかと悩んでいるのに…
えっ、私、悩んでいるの?
無意識に思った感情に、自分で驚いた。
悩んでまで付き合って行かないといけないの?
…好きだから悩むんでしょう⁈
どう、付き合うかって悩んでいる時点で、答えは出ているんじゃないの?