不埒な男が仕掛ける甘い罠
違う、そうじゃない……
私は拓真が好き…この気持ちは変わらない。
浮気されたのに、前と気持ちは少しも変わってないの?
それは…
気持ちが変わらないなら、許してあげれば良かったじゃない?
裏切られて傷ついたのに、すぐになんて無理…
いつになったら許せるの?一週間後?一ヶ月後?半年後?
それは…わからない。
許せなかったら?
………
自問自答を繰り返した末、心の声に言い返せない私は下唇を噛んでいた。
「……おい」
「ひっー…」
ポンと肩を叩く手に驚いて変な奇声をあげ立ち上がる。
「ぷっふふふ…なんだ、その声⁈驚き過ぎだろ?」
背後に立つ男を睨みつけながら
「突然、背後から肩を叩かれて驚かない人がいるの?」
「何度も呼んだのに…上の空だったのは唯だぜ」
確かに、思い悩んでいたから周りの声が聞こえなかったのかも知れない。
「ごめん…考え事してて」
素直に顔の前で両手を合わせ謝った。
「…まぁ、俺も返事をしない唯を驚かそうと思って肩を叩いたからな…奇声をあげるとは思わなかったけど…」
ぽりぽりとこめかみ辺りをかいて苦笑いする新ちゃんを憎めなくて
「もう、謝り損じゃない」
怒ったふりをして頬を膨らませた。