不埒な男が仕掛ける甘い罠


「怒るなって…俺が悪かったよ」

ぷにぷにっと頬を親指と中指で挟んで、意地悪く笑い遊んでいる。

「それが謝ってる態度?」

「見えない?」

「ちっとも見えない」

「だよな…かわいいから、ついな」

ボソッと呟いた声を聞き逃さなかった私の耳の中で、新ちゃんの声がこだましている。

かわいいって…

みるみるうちに自分でも制御できない熱が頬に集まる。

それを見ていた新ちゃんは口角をあげ、意地悪な表情
をした。

「かわいいよ…唯の変顔」

恥ずかしさに更に頬だけじゃなく顔中熱くなっていく。

そして、頬は掴まれたままで

「フフフ、ゆでダコみたい」

からかわれて、言葉にならない怒りに新ちゃんの胸を叩いて抗議する。

バカ…バカ…バカ…

すると、両手首を拘束された。

「……しん‥ちゃん」

急に変わった雰囲気に、おそるおそる名前を呼んでいた。

「俺の呼びかけにも反応できないほど、唯の頭の中を独占していたの消えた?」

さっきまでの意地悪な表情とは違い、真剣な顔つきに心臓が速く高鳴っていく。

うわずった声で返事をしていた。

「……うん」

「何を考えてた?」

「……それは…」

「それは?」

言えないよ。
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