不埒な男が仕掛ける甘い罠
いいアイデアだと思ったのに…
要は、既製品だとこの店の雰囲気に合わないって事だよね。
チラッと煉瓦が目に入った。
「ねぇ、煉瓦ってまだあるの?」
「どうして?」
「あの煉瓦がたくさんあるなら、カウンター席とソファ席の通路に高さのある壁を作ったらどうかなぁって…できれば、中に鉢の観葉植物やお花なんかを置いたらいいと思ったんだけど、どう?」
顎に手をあて考える新ちゃんの表情は、経営者の顔つきだった。
スツールでクルッと周り、店内をしばらく見渡していた新ちゃんは、業者さんの元へ。
しばらく店内を見渡しながら話し込んでいた。
そして、ニコッと私に笑いかけた後、業者さんと一緒に図案らしきものを紙にいくつも書き始めた。
そして構想が練りあがったのか、新ちゃんは笑顔でオッケーサインを私に向けた。
嬉しくて、頬が緩んでいく。
業者さんに頭を下げた新ちゃんが、戻ってきて私の頭をポンポンと優しく叩いた。
「煉瓦のアイデア採用だ」
「本当に?」
「あぁ、圧迫感を感じさせないように隙間を作って煉瓦を積み上げる。経費も時間もそれほどかからないし、唯のアイデアは俺じゃ考えつかなかったよ」