不埒な男が仕掛ける甘い罠
うそ…大家って、だから壁を突き破るのも誰の許可もいらないんだ。
さらっと言い、驚く私を置いて内階段を上っていった
新ちゃんの後をさらに驚きながら追う。
メゾネットだったんだ…
そして、上の階もガランとして何もなかった。
「ここで住むのに必要な物、一緒に揃えてくれないか?」
想像もしてなかったお願いに、瞬きするのも忘れ新ちゃんを見つめたまま私の脳は勝手に舞い上がり、その意味を確かめずにはいられない。
「今までの物は?」
「処分する」
「どうして?そのまま使えばお金を使わなくていいんじゃない」
「お金の問題じゃない。唯と選んだ物だって事が大事なんだ」
嫌いな相手だったら、断るところだけど…
私を好きだと言った新ちゃんに、そんなことを言われて悪い気はしない。
いや、むしろ嬉しいと思っていた。
新ちゃんだから→幼馴染だから→上司だから、頼られて嬉しいんだと変換して
「仕方ないな…クッションを選ぶついでに一緒に選んであげる」
「ありがとう…助かるよ」
そこに甘い雰囲気がなく、期待外れの返事にガッカリしている。
なんなの?
普通じゃん…
無意識に唇を尖らせていた私を新ちゃんが口角を上げ見ていたなんて気がつかなかった。