不埒な男が仕掛ける甘い罠
「早く、唯が選んだベッドで唯と寝たいな」
さらに名前の部分だけ強めに言われ、いっぱいいっぱいの私は新ちゃんと視線を合わせて話す事ができないまま、家具選びは終了し、配達の手配を済ませてた。
その後、クッションをソファ分購入し外に出ると、すでに夕方を過ぎていたようで外は薄暗かったが、車にクッションを詰め込みお店に運んだ。
「サンキュー…助かったよ…」
と、笑った新ちゃんが、お店の出入り口のガラス窓を見つめた。
「どうしたの?」
「…いや、何でもないよ」
妖しい笑みに変わり、突然、距離を縮めてきた新ちゃんに一歩、一歩と後退してカウンターに追い詰められてスツールに腰かけてしまう。
行き場を無くした体を囲うように新ちゃんの両手がカウンターの縁に手をついた。
ドキドキする体勢に視線を彷徨わせていたら、首を傾げた新ちゃんに斜め上から名前を呼ばれ顔を向けると
、触れそうな唇との距離に心臓は速くなりゴクッと息を飲み込んだ。
それなのにスッとかわされ、どうして?と心が揺れる。
まるで、期待していたみたいじゃない…
そんな私を見て、見透かしたように意地悪く笑い私を弄ぶ男に悪意を感じた。