不埒な男が仕掛ける甘い罠

「…いいのか?泣いてたぞ」

部屋にあがりながら慧に尋ねる。

「…いいんだよ。男なんて、俺だけじゃないだろ」

慧らしくない吐き捨てる言い方に、俺は地雷を踏んだらしい。

何が悪かったなんてわからず…

「まぁな」

「ところで、突然何?」

「あぁ、泊めてくれ」

「いいけど…やっと唯を口説けたの?」

「残念ながら…まだ。数日の問題だと思うけど…」

これからの企みを想像して笑っていたらしい。

怪訝な表情の慧が

「ほどほどにしてやれよ。唯は恋に恋してるだけなんだからな」

「ふーん…それなら亀裂を入れれば直ぐに壊れるよな」

新たな企みが1つ増えた。

「悪い顔してるぞ…お前のその裏の顔、唯が知ったら悲しむだろうね」

「そんなの、教えるはずないだろう。今まで唯の前では優しいお兄ちゃんでいたんだ。変わるなら優しい彼氏に変わるだけの話だ。そもそも、こんな面倒な事になったのもお前がしっかり見てないからだろう⁈」

「俺のせいかよ」

口を尖らせる慧は、唯と双子なだけあって拗ねる仕草まで同じなんだと笑ってしまった。

「なんだよ…まぁ、頼まれてたのに唯に男ができたのは俺にも半分責任があるし、今回、少しだけ協力してやるよ」

サンキューと、昔のように慧の頭を撫でた。

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