不埒な男が仕掛ける甘い罠
「…‥オープンの準備を‥」
「うそ言うな‥キスしてたじゃないか」
キスなんて‥
昨日の夜の甘いキスを思い出し言葉がつまる。
あれも浮気…になるよね。
「俺はお前の浮気を許して一緒に住もうって言ってるのに、どうして拒むんだよ。お互いさまなのに…俺だけが悪者じゃないか」
確かにキスしたけど…お互いさまになるの?
「お互いさまの訳ないだろう…」
いつも間にか、隣に立つ新ちゃんが拓真の襟元を掴んで今にも殴りそうになっていた。
「新ちゃん、辞めて…」
慌てて拳をあげた新ちゃんの腕を掴んだ。
「店の中でキスして、何もないって言うのかよ」
「あぁ、あれね。見てたんだ…」
新ちゃんが笑う…その笑顔を怖いと思ってしまう。
「キスしてるように見せたんだよ」
どうして…そんなことを?
それは拓真も同じように疑問に思ったようで、訳がわからないという表情をしている。
「唯を傷つけた奴に、仕返し。ショックだったろ⁈唯はお前以上に傷ついてるんだ…それが、わかんないのか?」
唇を引き結び、言い返せない様子の拓真。
あの時は驚いたけど、新ちゃんの優しさに嬉しくなる。
「傷つけた事はわかってる。だから、嫌われる前に修復したくて焦ってた。ごめん」