不埒な男が仕掛ける甘い罠

えっ…

グイッと腕の中に囚われ、視線の先には男らしい喉仏が見えてドキドキしているその間に、新ちゃんの指が頬にかかる髪を耳にかけ、不意に耳に触れる指先にピクッと体が反応する。

「……『俺は誰かの代わり』ってあいつが言ってた誰かって誰のことなんだろうな?」

艶めかしい瞳をしながら聞かないでほしい。

その誰かに気がついてしまったから…

無自覚に、拓真を傷つけていたと知ってしまった今は、その瞳に囚われる訳にはいかない。

「…わ…からない。でも、それでも私といたいと言ってくれる拓真の事、ちゃんと考えなくっちゃ…」

「何を考えるんだ?…」

私の心を見透かしたように見つめる瞳

付き合ってきた歳月、拓真を好きだったという思いにウソはない。

例え、それが無意識に誰かの代わりにしていたとしても…そこに愛情はあった。

「考えても答えは同じだろ…時間を引き伸ばすだけ余計にあいつを傷つけるだけじゃないのか⁈」

「…でも、拓真の気持ちを考えたら別れるなんて簡単に言えない」

「答えは出てるのに綺麗事だな…お前は悪人になりたくないだけだ。それなら、俺が悪者になってやるよ」
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