不埒な男が仕掛ける甘い罠
「まさか俺が浮気してるって思っているのか?バカだなぁ…絵里さんは…本当にただの同僚だよ」
「…でも、嫌なの。ここ最近電話口でも、こうして会っている時でも絵里さんって人が拓真の口から出てくるって気づいてる?絵里さんがこう言うんだ…絵里さんがさ…絵里さんならって…私と比べてるようで嫌だった」
「…なんだ?ヤキモチ?」
「そうよ。彼女なのに私は拓真と会える時間が少ないのに絵里さんは拓真の側にいて羨ましくて嫉妬してたわよ。でも、ヤキモチやいているなんて言ったら、拓真に嫌われるって思って言えなかった」
「そんなことで嫌いになるはずないのに…俺が一番好きなのは唯だよ」
ほら、また…
一番って何?
それなら、2番、3番と好きな人がいるの?
一度、疑いだしたら一言一言に敏感に反応してしまう。
いつもなら私も好きと言うのに…今日は言えない。
「とにかく、私といる時には他の女の人の話はしないで…」
拓真にぎゅっと抱きついた。
「ごめんな…もう2度しないから」
その意味は、拓真にしかわからない。
だから…今は、その言葉を信じてもう何も言わないでおこうと心の隅に浮かんだ疑念を奥底に閉まった。