不埒な男が仕掛ける甘い罠
新side
突然来た俺に嫌な顔もせず泊めてくれた慧を起こさないように部屋を出た。
オープンも数日とせまり、いろいろと忙しく時間が足りない。
なら、落ち着いてから唯を取り戻せばと思うだろうが、俺は同時進行を進めていく。
その為に計画を立ててきたのだから…
今日の予定は、店に顔を出し工事の最終確認、その後、店のソファにクッションを置きたいと思い始めたのでその買い出し。仕事場の関係で、今の部屋から新しい部屋に引っ越すからその引っ越し準備だ。
眠い頭で階段を下り行くと、唯の父親、仁さんが待ってたかのように階段に腰を下ろしタバコを吸っていた。
「おはようございます」
「あぁ、…おはよ」
階段を下りきることもできず、頭上から挨拶をして、
しばらくの沈黙。
立ち上がり、ポケットから仁さん愛用のタバコの箱を俺に向け吸えという。
不可思議な彼の行動と何を言われるのだろうかと思い苦笑いを浮かべながら、一本頂いた。
「……新」
「はい」
「唯の事、…どこまで本気なんだ?」
どこまでって⁈
「結婚したいぐらい本気ですかね」
「……唯に…男がいるのにか?」
「唯がそいつに本気でも諦めませんけど…俺が嫌いだっていっても好きにさせるだけですね」