不埒な男が仕掛ける甘い罠
「…ふっ、結局諦めないんだな」
苦笑して、俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でる仁さん。
「えぇ、後悔は1度きりで十分ですから…唯の側を離れなければこんな苦労してなかったでしょうね」
「…唯がお前を選ぶとは限らないぞ」
「選びますよ」
「すごい自信だな」
呆れた口調で笑う仁さん。
「まぁ、唯を悲しませないなら誰でもいいんだが…外で盛るのはやめろ。誰が見ているかわからないからな」
見られていたのか…
「すみません…今後は気をつけます」
「その言い方だど、結婚前の俺の娘に手を出すって事か?覚悟があってなんだろうな」
「覚悟してます」
声色が急に変わり凄味のある声に内心ビビっていたが、ここで即答しないといけない気がして、先ほどまでの馴れ合ったり雰囲気を消し真面目に答えた。
「なら、いい」
恐ろしい表情から、いつもの砕けた表情に変わりホッとしつつ、心では、仁さんだって昔は相当なもんだったった…はずなんだけどと軽く毒吐いておく。
やはり、娘の事になると父親なんだろうなと思いながら、タバコの火を消した。
その後、なぜか仁さん宅で朝食を頂く事になり、断る事もできず起きてきた慧と一緒に朝食を済ませリビングで食後のコーヒーを飲んでいた。