小さな村の大きな話
【りんside】


「りんさん、何飲む??」


「あ、私が……」


「だーめー。キッチンは俺の城だから」


「あ、はい…。えっと、じゃぁ、水で」



大和くんとは違ってふわふわとしてて掴みどころのない人だ。



「座って座って!!」


「失礼します」


「りんさんは大和のどこが好きなの??」


「ええっ!?ど、どこって…。
あ、明るいとこ、ですかね…」


「明るい??あいつ根暗だよ??」


「明るいですよ??少し幼さの残る明るさ…。無邪気で、優しい」


「ふーん。りんさんは大人しそうだし、もっと頼りになる男のほうがいいんじゃないの??」


「いざという時には頼りになりますし、大和くんとなら、きっと同じ歩幅で歩いていけるから」


「そっか」



ふわっとお兄さんが笑った。
やっぱり兄弟なんだな、笑った顔ときの目元がそっくり。



「大和のお相手が君で良かったよ、安心安心♪」


「あの、お兄さんに聞きたいことがあって…」


「ん??なに??」


「大和くんの事、大好きですよね」


「……俺??」


「はい」


「嫌い」


「ええっ!?」


「かもしれない」


「……」



掴みどころのない人、というよりふざけてるだけ、なのかな??
もうこの人よくわかんない。



「実際俺もわかんないよ。大和は大事な弟だけど嫉妬してる。
こんなこと聞いてくるって事は、りんさんも俺達の実家の事情を多少なりとも把握してるんだろ??」


「…はい」


「手放しに好きとは言えない。これが答えだよ」


「そう、ですか…。
ありがとうございます、ちゃんと答えてくださって」



大好きなんだ、大和くんのことが。
でも、素直に好きって言えるかわからない。少しの嫉妬があるから。
でもね、好きの反対は嫉妬じゃない。
大丈夫、この人はちゃんと大和くんが好きだ。



「りんさんのご両親は??」


「……え、と……。
佐々木らんってご存知ですか??」


「モデルの??」


「はい」


「知ってるけど、確かデザイナーと結婚して高校生くらいの娘がいるよね」


「それが私です」


「えっ!?」


「もう何年も一緒に暮らしてませんけどね。
ほとんど海外で仕事してますし、私は私で大和くんと住んでるし」


「待って、二人同居してるの??」


「えっ、知らなかったんですか!?」


「知らないよ!!
あいついい大人だぞ??高校生と同居は、まずいだろ!!色々と!!」



ガチャ



「「ただいまー」」


「大和!!!ちょっと来い!!!」


「ええっ!?!?」


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