小さな村の大きな話
「おはよう、昨日はよく眠れた??」
「はい、ありがとうございました」
朝起きて、何食わぬ顔してみんなでご飯を食べる。
食べ終わったらすぐに帰る予定だ。
「ごちそうさま。兄ちゃん、僕車取ってくるね」
「うん、行ってらっしゃい」
まとめた荷物を玄関に運んで大和くんを待つ。
「君、昨日の夜話聞いてたでしょ??」
「っ!?!?気づいてて…」
「華さん、誰か気になる??」
「はい。でも、大和くんが話してくれるまで――
「婚約者だよ」
「……へ??」
「両親が見つけてきてね。父と同じ弁護士。
少し気が強いけど芯があって良い子だ」
「そう、なんですか…」
「いい事教えてあげよう。
昨日僕が言った事は嘘。君たち二人のこと、応援なんてしてない。
こんな関係だけど大和は俺の弟で幸せになってほしいと心の底から思ってる」
「はい…」
「…君の病気、あんまり良くないみたいだね」
「っ!!」
「気づかれてないと思った??
注意深く見てればすぐわかる。というか、彼女が高校生って聞いたときからわかってたよ」
「なんで…」
「だって、そうだろ??大和は職業柄出会いは同僚か病人だ。激務だから趣味の友人とかいないだろうしね。
高校生で同僚はないだろ??となると後者だ」
「あ、そっか」
思ったより単純な理由だ。
疑ってかかれば確信を得ることは難しくないよね。
「君は大和と一緒に老いていく事はできない。必ず大和は独りになってしまう」
「っ!!」
「俺は先立たれる辛さをよく知ってる。こんなの、大和に味わってほしくない」
奥さんのことだ…。
「残される人がどれだけ辛くて大変か、君にはわからないだろう」
「……はい」
「大和を自由にしてほしい」
考えたことは沢山あった。
でも、悩んで悩んでそれでも大和くんと生きることを選んだ。
「おまたせ!!車回してきまからそろそろ行こうか」
「うんっ!!」
「山兄!!リビングに携帯忘れてるー!!」
「ええっ!?」
バタバタとリビングに戻っていく大和くんを見てクスリと笑うと、私は私の想いを告げた。
「お兄さん、人間何があるかわかりません。
もしかしたら突然の事故で大和くんが先に…って事もあるかもしれない。
大和くんに突然病気が見つかるかもしれない。
普通の人は何気なく過ごす時間でも私達は限りあると知っているから大事に出来る。
たとえ私が先にいなくなったとしても、後悔なんてさせない。間違ってなかったって思わせてみせる」
バタバタ…
「ごめんねー!!あれ、なんの話ししてたの??」
私とお兄さんは顔を見合わせて笑った。
「「なーいしょ!!」」
「えっ!!なにそれ!!ずるい!!」