小さな村の大きな話
8、いざ旅行へ!!
【りんside】
「そっかそっか、壱のお兄さんのところにねー…」
「樹ちゃんってさ、今まで彼氏とかいた??」
「いた事ないよ」
「うそー!!こんなに美人なのに…」
「そういう、りんだって素材はとってもいいのに」
「素材って…」
「目が隠れそうなくらい長い前髪と地味なメガネ。顔の大半隠しちゃってるじゃん。」
サラッと前髪を耳にかけられる。
「たしかに何度もそういう機会はあったけど。
私はさ、生きていくので精一杯だったから。生贄様って役目もあるし」
「……」
私、聞いちゃいけないこと聞いた。
あー、だめだな…ちょっと考えれば分かったことだ。
「それに何よりね、絶対好きになっちゃいけない人にずーっと片想いしちゃってるから!!」
!?!?!?
な、な、なんですと!?!?
「だ、だれっ!?!?」
「秘密」
「えー、ずるいよー!!」
「私も知ってる人??」
「そうだね、知ってる」
ガラッ
「随分騒がしいな」
「こんな所に閉じ込めてんだから、たまには良いでしょ??」
「明日、退院許可が出た。
俺は仕事があるから咲座家が家まで送ってくれるそうだ」
「分かった」
やっと、樹ちゃんも退院することができた。
新学期まであと、3週間。