小さな村の大きな話


「絶対誰にも言わないで、もし誰かにバラしたら…わかってるね??」



……なんだ??


ガラッ……

さっきの女の子がりんちゃんの病室から出てきてエレベーターの方に向かって歩いて行った。



「君!!…あの、りんちゃんを連れてきてくれた子だよね??」


「そうですけど、何か」


「いくつか聞きたいことがあるんだけど」


「別に構いませんけど…」



なんというか、愛想のない子だ…。
そして、不良。



「りんちゃんと何話してたの??」


「別にわざわざ先生に伝えるような事は何も。
女子高生同士の話なんてくだらない事なんでお気になさらず。
他に何が聞きたいんですか??」


「……りんちゃん、学校でうまくいってないみたいだけど…何があったのか説明してくれるかな??同じクラスなんだよね??」


「あなたと本田さんがどういう関係かは知りませんが
そういう事は本人に聞いたらいいんじゃないですか」


「じゃぁ、少し質問変えるね。
手に痣があったんだけど、あれなに??」


「だから、それも本人に聞けばいいんじゃないですか」


「まさかと思うけど、君じゃないよね??」


「はぁ…手の痣ぐらいでギャンギャンと…」


「ぐらいで??」



ドンッ

気づいたら近くの壁に胸ぐらを掴んで押し付けていた。



「っつ…は、なして…」


「質問に答えてからだよ。君がやったの??」


「はぁっ、はっ…知らな…」


「知らないわけ無いだろ!!」


「ひいっ…いや…はっ…はっ…はな、離し、て」



…過呼吸……??
相当怖がってるな…。
このまま脅して聞き出せば…!!



「樹ちゃん!!と壱原先生!?!?
ちょっと、壱原先生!!何してるんですか」


「長谷さん??離して下さい。
この子がりんちゃんを…!!」


「ちょ、落ち着きましょう。
樹ちゃん、過呼吸起こしてます」


「過呼吸じゃ、死ぬことはない」


「…それ、本気で言ってます??」


「君も看護師なんだから知ってるだろ??」


「そういうこと言ってんじゃありませんよ。
とりあえず、頭、冷やしてください」



ドンッ!!!!



「樹ちゃん、ゆっくり深呼吸しようか」



あれ、天井が見える……。
…投げられた??



「いやっ!!!はな、して…はっ…
こな…こない、で…はぁっ、はっ…」


「樹ちゃん、大丈夫、大丈夫だから。
私、視歩だよ??わかる??

…先生は医局に戻って下さい。
ここは私がなんとかしますから」


「いや、でも…」


「先生がいるとこの子が辛いんで」


「本当に、ごめん…」




あんなに怒った長谷さん初めて見た…。
まだ体中痛い…。
僕、本当に何やってるんだろう…。

たとえあの子がりんちゃんをいじめてたとしてもやって良いことと悪いことがある。

僕は医者として絶対にやっちゃいけないことをしたんだ…。



「僕、医者失格だ…」



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